少女

毎日絵を描き続けると
必ず画家になれる
なりあがりの男が
少女に 偉そうにつぶやいた

少女はそれを信じきって
毎日絵を描きつづけた
通りすぎる人たちの
心の中に隠れているものを・・・

お金がなくても
食べ物がなくても
寝場所がなくても
描きつづけた
  
きっと世界中で
一番美しい絵が
描けると信じて・・・
  
頭はグチャグチャ
着るものはボロボロ
朝も昼も夜も忘れて
キャンバスに絵の具を塗った

人の悲しみ 心の痛み
憎しみ 淋しさ
みんな色にして描いた
心が張り裂けそうになっても
ただ、ただ、描きつづけた
  
ある日背広の紳士が
少女の絵を見て
「これは 頭のおかしい人の絵だ」
そう言って笑った
 
少女は 白いキャンバスを
真っ黒に塗って
真中に赤い十字架を描いた
  
そして、少女は消えて行った・・・


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